グラグラしていた歯が抜けてしまったけど、これは元に戻すことはできるのかと考えてしまうことはありませんか?歯周病はむし歯と異なり、歯そのものが解けて黒くなってしまうことはあまりありません。見た目が比較的きれいな状態で抜けた歯は、元に戻すことはできるのでしょうか。

歯周病で抜けてしまった歯は基本的に元に戻すことはできません

歯周病が原因で抜けてしまった歯がどれだけきれいな状態でも、歯は基本的に元に戻すことはできません。

歯周病は歯を支える歯槽骨や歯の根っこに炎症が起こり、組織が破壊されてしまう病気です。歯を支えていた歯槽骨が吸収され、歯を支えられなくなってしまったためにグラグラになり、抜け落ちてしまいます。歯周病によっていちど抜け落ちてしまうと、歯槽骨および歯の根っこが吸収されてしまっているため、基本的に再生することはできません。

むし歯の場合、歯そのものが虫歯菌が出す酸によって溶けて黒くなってしまうため、見た目で分かりやすいですが、歯周病の場合、歯に症状は見られず、歯ぐきや歯槽骨に変化が起きるため、見た目ではすぐに分かりません。症状が進行し、歯槽骨の吸収が始まると歯が揺れ動きだすので、そこで初めて歯周病になっているのかもと気づく方が多いのです。そして、自然脱落してしまった歯を見せて、歯科医師に「抜けた歯をもとに戻してほしい」と言っても、歯を支えられないので不可能なのです。

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歯周病の進行具合を把握してますか?

歯周病で歯が抜けるといっても、ある日突然抜けるのではありません。歯周病は「サイレントキラー」と呼ばれ、静かに進行していく怖い病気です。歯周病で歯を失わないために、まずは歯周病の進行具合を知っておきましょう。

軽度歯周病

軽度歯周病は、歯ぐきが腫れて出血する、とう症状が見られます。歯周病の初期症状は歯ぐきの腫れや出血です。歯ぐきが腫れている感じがする、歯磨きのときに出血する場合、軽度歯周病が疑われます。

中度歯周病

歯周病が進行し、中度歯周病になると、歯ぐきの炎症に加え、歯槽骨の吸収が始まります。歯周病特有の臭いも加わり始めます。そのため歯ぐきが下がってくる、口臭が強くなる、歯が少し揺れ動き始める、という症状が見られます。

重度歯周病

重度歯周病になると、歯槽骨の吸収が進み、歯を支えることが難しくなってきます。また膿も溜まり、強い口臭となって周りに不快感を与えてしまいます。噛むと痛い、歯が抜けそうといった症状は、歯周病がかなり進行していると考えられます。

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歯がグラグラしてきたら、どのように対処すればよいの?

歯周病の初期段階では痛みがほとんどなく、自覚症状が歯ぐきの腫れや出血がほとんどです。これは歯肉炎でも見られますが、そのままにしておくと歯周病が悪化し、歯が脱落してしまうかもしれません。歯がグラグラしてる?と思ったときは、歯周病が進行しているサインです。では歯がグラグラしてきたら、どのように対処すればよいのでしょうか。

1.歯科医院を受診する

葉が揺れ始めたら、とにかくすぐに歯科医院を受診しましょう。特に、これまで歯医者にかかったことがない、むし歯になったことがないという方は、歯科医院へ行くのが面倒と感じるかもしれません。しかし、歯科医院で歯が揺れている原因を突き止め、その原因が歯周病である場合、すぐに処置をする必要があります。

2.歯石除去、クリーニング

歯周病の原因はプラークと歯石です。特に歯石は固く歯にこびりついているため、歯ブラシでは落とすことができません。歯科医院で専用に器具を使って歯や歯周ポケット内にある歯石を取り除き、細菌の塊であるプラークを落とすためのクリーニングをして炎症を抑え、症状の改善を目指します。

3.抜歯

歯周病で抜けてしまった歯は元に戻せません。また保存不可と診断された歯は抜歯になることもあります。抜歯をし、きちんと噛める補綴治療が必要となります。

歯周病で歯が抜けないようにするために

歯周病で歯を支える歯槽骨に炎症が起きると、歯を支えることが難しくなります。抜けてしまった歯は元に戻せないだけでなく、残っている歯の動揺もなかったことにはできません。いちど吸収された歯槽骨は元に戻せないので、もし歯が揺れ動いていた場合、できることは「これ以上歯周病を悪化させないこと」です。

そのためには、歯周病の原因となるプラークや歯石を定期的に取り除かなければいけません。歯周病治療を終えたあとは、お口の中の状態が安定しているか、数値は悪くなっていないかなど、口腔内チェックである定期検診が不可欠です。定期検診では歯周ポケット数値測定や歯石除去、クリーニングなど歯周病の原因となるお口の中の細菌を減らし、清潔な状態にします。定期検診は、歯周病の予防や悪化防止に最も効果的です。歯が抜けてしまった方や揺れている歯がある方はもちろん、歯周病の兆候がない方も、歯周病で後悔しないようしっかりとセルフケアと定期検診を受けるように心がけましょう。

コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。