

歯周病はいちど進行すると元に戻らない病気です。腫れた歯ぐきをメスで切り膿を外に出す・消毒して炎症を抑えるなどの対症療法では進行を止めることはできません。歯周病を重症化させないためには、定期的な検診で深めの歯周ポケットを見つけて初期段階で治療を始めましょう。「歯の健康管理」先進国である北欧のフィンランドでは、歯になんのトラブルがなくても3ヶ月に1度は歯科医院にいくことが義務づけられているそうです。歯医者は、「歯が悪くなるのを予防するために行く」というのが当たり前だということです。日本は「悪くなった歯を治療するために行く」のが歯医者、が一般的ですが、その結果、歯周病の発症・進行を防げず、多くの日本人が80歳になるまでに20本以上の歯を失い、不便な人工歯での生活を余儀なくされています。私たちが生きていく上で、歯周病菌への感染を避けることはできませんが、その発症・進行は防ぐことができます。そのためには、お口の中にいる歯周病菌が悪さをしない数にまで徹底的に除菌し、再び増殖しないように継続的に管理していくしかありません。

歯の病気の代表的なものに、むし歯と歯周病があります。むし歯は〈歯そのものが破壊される病気〉ですが、歯周病は、知らないうちに〈歯を支えるまわりの組織に起こる病気〉です。私たちのお口のなかには、歯の表面、歯と歯ぐきの間、舌、あご、頬の粘膜などに約700種類を超える細菌が生息しています。そのすべての菌が悪さをするわけではありませんが、腸内細菌と同じように良い菌と悪い菌が生息しています。歯周病はお口のなかに生息する幾つかの悪玉菌がかたまり、歯垢やプラークを形成し、そこをすみかとして増殖。やがて歯茎の腫れや出血などの症状を引き起こしたり骨をも溶かしてしまう恐ろしい病気です。


●歯周病になると、歯茎に炎症が起き腫れたり出血を伴ったりします。歯周病のひとつである歯周炎は歯を支える土台となる歯槽骨が溶けて歯茎が下がり、歯を失うこともあります。
●歯と歯茎の間にたまった汚れ(歯垢)が歯周病の原因のひとつです。歯垢の中の毒素などによって歯茎などの歯周組織が炎症を起こします。
●炎症が進むと歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深いすき間ができてしまいます。歯周ポケットが汚れのたまり場となり炎症がより奥へと侵入し歯茎などの歯周組織が炎症を起こします。
●歯周病菌は歯周ポケットが浅いうちは歯みがきでかき出すことができますが、歯周ポケットが深くなるほど歯ブラシが届かなくなります。

糖尿病
近年、糖尿病の患者さんが歯周病を徹底的に治療することで血糖値が改善する、ということが明らかになってきています。歯周病を徹底的に治療することで歯周病菌が血管内に侵入することを防ぐことができれば、炎症物質の分泌が抑えられインスリンの働きが正常に戻ることで血糖値も改善するということです。糖尿病の患者さんは歯周病を併発している人がほとんどです。歯周病をきちんと治療することが、血糖値を改善する第1歩といっても過言ではありません。
心筋梗塞・脳梗塞
糖尿病の患者さんの場合、その二次症状として動脈硬化による「心筋梗塞」や「脳梗塞」といった、命に関わる合併症を併発することがあります。それらは糖尿病による血圧上昇が原因となっています。これら高血糖・高血圧から引き起こされる合併症には共通点があり、心筋梗塞も脳梗塞も基本的には動脈硬化(血管障害)から発病することが多いということです。実際の年齢以上に血管の劣化・老化を早めてしまう原因は、食べ過ぎや飲み過ぎ、喫煙やストレスなどの生活習慣などと密接に関係し発病・進行する糖尿病などの生活習慣病です。そして近年の研究で歯周病もまた、動脈硬化(血管障害)の危険因子である可能性が高いことが解明されつつあります。
誤嚥性肺炎
歯周病菌が体内に入り込む経路に血液のほかに気道があります。唾液中に歯周病菌が混ざり気道に流れ込むと“肺の炎症”を引き起こします。さらに、人工呼吸器をつけた患者さんの肺炎リスクは極めて高く、院内での感染症による死因のトップです。歯垢の中の悪玉細菌がチューブを介して肺に侵入して深刻な影響を及ぼしていると考えられています。気道に唾液などの異物が入ると、通常は反射的にむせたりしてそれを防ぎますが、睡眠中はそれもできず、気道に流れ込んでしまうことがあります。これを誤嚥〈ごえん〉といい、誤嚥によって起こる肺炎を「誤嚥性肺炎」と呼んでいます。誤嚥は、病気や加齢、歯の本数が少ない方が飲み込む機能や咳をする力が弱くなったり、唾液の中に多くの細菌が含まれている歯周病の患者さんは口腔内の細菌や逆流した胃液が誤って気管に入りやすくなり、その結果、誤嚥性肺炎を発症します。
骨粗鬆症
これまで骨粗鬆症と歯周病の関係は、骨粗鬆症状態にある人は普通の人に比べて歯周病が悪化しやすいと考えられていました。しかし最近では歯周病を治療すると、骨粗鬆症の状態が改善するという症例もみられるようになりました。歯の治療のために撮影されたレントゲン写真から骨粗鬆症を診断できるようにもなってきています。骨粗鬆症治療に伴う顎骨および歯周組織の変化、影響に関しての研究が進んでいます。歯科治療の段階で骨粗鬆症の兆候を発見することができる日も近いと思われます。
心臓病
歯周病と関連がある病気として「感染性心内膜炎〈かんせんせいしんないまくえん〉」があります。感染性心内膜炎とは、心臓の内壁を覆っている膜「心内膜」に細菌などが感染して炎症が起こり、心臓の働きが低下する病気です。お口の中にいる歯周病菌などの悪玉菌が、抜歯や出血を伴う歯肉治療時に血液中に入り込んで発病(菌血症)することは古くから広く知られています。
不妊症・早産 低体重児出産
歯周病は親から子どもへ感染しますが、妊婦さんが歯周病だと胎児へ悪い影響を及ぼすことが明らかになっています。日本臨床歯周病学会の報告によると、歯周病にかかっている人は普通のお産をした人に比べて7倍も早産や低体重児のリスクが高くなります。妊娠中の女性が歯周病に罹患(りかん)している場合、早期低体重児出産のリスクが7倍も高まるという報告が、1996年に米国で発表されました。妊娠や月経で分泌される女性ホルモンは、血中から歯と歯茎の境目にある溝に到達して、歯周病菌を増殖させてしまうという特徴があります。自治体が妊婦に歯科健診を勧める理由は、歯周病の有無をチェックさせるためです。これは逆にいえば、早産や低体重児出産の産科的疾患は歯周病治療によりそのリスクを大幅に軽減できるということです。
菌血症・敗血症
歯周病菌を含む口腔内細菌が血液中に侵入する現象を指します。歯周病にかかると歯肉に炎症が起こり、歯磨きなどの際に出血し、細菌などが血液中に侵入すると菌血症を引き起こします。歯原性細菌症によって細菌などが全身をまわると敗血症(はいけつしょう)の原因になります。敗血症になると重篤な全身症状を引き起こします。
リウマチ
リウマチは、免疫異常により関節に腫れや痛みがともなう炎症が起こる病気です。また関節リウマチと歯周病の原因や病態には共通する点が多くあり、関節リウマチがあると歯周病がさらに進行し、逆に歯周病があると関節リウマチに影響するといわれています。