歯周病チェックリスト
歯の病気の代表的なものに、むし歯と歯周病があります。むし歯は〈歯そのものが破壊される病気〉ですが、歯周病は、知らないうちに〈歯を支えるまわりの組織に起こる病気〉です。私たちのお口のなかには、歯の表面、歯と歯ぐきの間、舌、あご、頬の粘膜などに約700種類を超える細菌が生息しています。すべての菌が悪さをするわけではありませんが、腸内細菌と同じように良い菌と悪い菌が生息しています。歯周病はお口のなかに生息する幾つかの細菌が歯垢やプラークを形成して、そこをすみかとして増殖し、やがて歯茎の腫れや出血などの症状を引き起こしたり骨をも溶かしてしまう恐ろしい病気です。
歯周病チェックリスト
&歯ぐき年齢
該当する項目にチェックをつけてください。
チェックのついた項目のうち、Q1~5の項目は各10点、Q6~10は各5点、Q11~18は各2点、Q19~21は各1点で計算し、合計点数を出します。
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9点以下
あなたの歯ぐき年齢は・・・20代
あなたの歯ぐきは健康そのもの。この状態を維持できるように、油断せず毎日のケアを続けましょう。ハブラシは1~2ヶ月に1本の目安で交換。年に2回は歯科医院を訪ねて、歯科検診と歯石除去などのクリーニングを受けましょう。
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10~17点
あなたの歯ぐき年齢は・・・30代
近い将来、歯周炎になる可能性があるので、早めに対策を講じる必要があります。ハミガキの時に出血があれば、歯肉の一部が炎症を起こす歯肉炎の段階です。歯肉炎は比較的簡単に治すことができますが、放っておくと歯周炎に移行してしまいます。
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18~30点
あなたの歯ぐき年齢は・・・40代
要注意の歯周炎予備軍の段階です。ときどき歯肉が腫れたり治ったりしますが、放置しておくと歯周炎はどんどん進行します。とくに、一部に歯の動揺や膿のでる箇所がある場合はすぐに治療が必要。ハミガキも予防ではなく治療と考え、食生活の改善もしましょう。
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31点以上
あなたの歯ぐき年齢は・・・50代
すでに歯周炎に冒されている状態と考えられますので、一刻も早く治療してください。歯の動揺や歯の周りから頻繁に膿がでるようなら、手術を含む本格的な歯周治療が必要ですし、抜歯の可能性もあります。糖尿病や心疾患などの全身疾患への影響も懸念されます。
東京医科歯科大学 渡辺久先生監修
まんが歯周病
健康な歯周組織を取り戻すまでには、数ヶ月から1年ほどかかります。
歯周組織が再生するまでの期間は個人差があり、歯周病の程度によっても異なります。
歯周病治療後のスケジュールの詳細も異なりますので、担当医の指示に従い、必ず定期的な検査を受けるようにしましょう。
歯周病を完全に治し、再発させないためには、歯や歯の周りをいつも清潔に保つことが大切です。
口のなかの衛生状態を良好に保つためには、ご本人も治療を担う一員です。
歯周病の診察と検査
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①最初に歯科医師による歯周病の検診を受ける
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②歯周ポケット等の検査
口腔内の状態を診察 -
③デジタルレントゲン写真を撮る
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④細菌数の検査(1分ほどで総細菌数を測定)
健康な歯周組織を取り戻すまでには、数ヶ月~1年ほどかかります。
また歯周組織が再生するまでの期間は個人差があります。
必ず定期的な検査を受けるようにしましょう。
登場人物のご紹介
第1話 検診
いくら治療しても、いくら歯みがきをしても、
多くの日本人が歯を失ってしまうワケ
根本的な原因を取り除けていない
日本人の多くが歯を失う大きな原因は歯周病とむし歯です。どちらも細菌による感染症です。お口のなかの歯周病菌やむし歯菌を徹底的に取り除くことが根本的な解決策になります。悪くなった患部だけを削ったり詰めたりしても一時的に症状を緩和しているだけで、歯周病菌やむし歯菌が取り除かれたわけではありません。また歯を削ることは長い目で見ると、抜歯への一歩を踏み出したことになり、歯の表面を溶かしていた細菌が削ったところと詰め物の隙間から歯の内部に侵入します。そうなってしまうと細菌の侵入を止めるため、さらに削ることになり最後は抜歯しなければいけなくなります。 削られた歯の寿命は、何も対策を打たなければ40年といわれていますので、10才のときに歯を削ったとすると、50才のときに、その歯は抜歯の運命をたどることになります。
毎日歯みがきをしてもすべての歯垢は落とせない
歯周病菌やむし歯菌に代表されるお口のなかの悪玉菌は、単体では非常に弱い菌のため何も悪さをすることはありません。そこで細菌同士が手を組み、かたまりとなることで、お口のなかに悪影響を及ぼす力をもちます。その悪玉菌のかたまりが歯垢です。ほとんどの人はその歯垢を取り除くために毎日きちんと歯みがきをしますが、歯の表面にくっついている歯垢は取り除けますが、歯の裏側や歯と歯の間、歯並びが悪かったり、歯が欠けたり抜けたまま放置している箇所があると歯ブラシの毛先が届かず、みがき残しをつくることになります。取り除くことができなかった歯垢は、しだいに歯や歯の周りの組織の深部に侵入して居座ることになります。 そうなってしまうと歯みがきでは永久に取り除けなくなります。
定期的に歯科医院に通う習慣がない
日本人の多くが定期的に健康診断を受けています。 血液検査では、いまの身体の状態が具体的な数値として示されるので、治療が予防に役立ちます。おなじように歯の健康維持にも、歯周病菌・むし歯菌を増殖させないよう、お口のなかの状態を数値化し、継続的に管理していくことが大切になります。しかし日本人には定期的に歯科医院に通う習慣がありません。日本には「国民皆保険制度」があり、どこか悪くなったら治療には保険が適用されるため安価で治療を受けることができます。しかしそれは「悪くなってから歯医者に行けばいい」という習慣を定着させることにもなってしまっています。結果、治療により歯周病やむし歯の症状を一時的に緩和することはできても、歯周病菌やむし歯菌が再び、お口のなかで増殖するリスクは管理できないため、数年後に再発する歯周病やむし歯を防ぐことができないのです。お口のなかの健康状態を数値化するためには定期的・継続的なデータの蓄積が必要なのです。
歯周病とその特徴
1. 歯周病は慢性の細菌感染症です
歯周病は目立った自覚症状がありません。歯周病は「沈黙の病気」と呼ばれ、痛みがないまま、ゆっくりと進行していきます。歯と歯のあいだの溝にプラークがたまり、腫れたり痛みを感じたりの症状が治まったり傷んだりを繰り返して進行します。
2. 骨が溶けると歯が抜けてしまう
歯周病は「歯周病菌」と呼ばれる細菌が原因です。その細菌が歯を支えている骨を溶かしてしまいます。骨が溶けだしたとしても痛くもかゆくもありません。歯ぐきから膿が出たりといった症状は、すでに重症といえます。いったん抵抗力が落ちると、坂を転がるように症状が悪化してしまうのも歯周病の特徴です。
3. 歯みがきだけでは治らない
歯周病になると、歯と歯ぐきのあいだに隙間ができます。これを「歯周ポケット」といいます。歯周ポケットに入り込んだ細菌のすみかとなっている歯垢は、歯みがきだけでは落とすことができません。
歯周病とその対策
歯周病はいちど進行すると元に戻らない病気です。腫れた歯ぐきをメスで切り膿を外に出す・消毒して炎症を抑えるなどの対症療法では進行を止めることはできません。歯周病を重症化させないためには、定期的な検診で深めの歯周ポケットを見つけて初期段階で治療を始めましょう。「歯の健康管理」先進国である北欧のフィンランドでは、歯になんのトラブルがなくても3ヶ月に1度は歯科医院にいくことが義務づけられているそうです。歯医者は、「歯が悪くなるのを予防するために行く」というのが当たり前だということです。日本は「悪くなった歯を治療するために行く」のが歯医者、が一般的ですが、その結果、歯周病の発症・進行を防げず、多くの日本人が80歳になるまでに20本以上の歯を失い、不便な人工歯での生活を余儀なくされています。私たちが生きていく上で、歯周病菌への感染を避けることはできませんが、その発症・進行は防ぐことができます。そのためには、お口の中にいる歯周病菌が悪さをしない数にまで徹底的に除菌し、再び増殖しないように継続的に管理していくしかありません。
知らず知らずのうち
進行する歯周病
歯の病気の代表的なものに、むし歯と歯周病があります。むし歯は〈歯そのものが破壊される病気〉ですが、歯周病は、知らないうちに〈歯を支えるまわりの組織に起こる病気〉です。私たちのお口のなかには、歯の表面、歯と歯ぐきの間、舌、あご、頬の粘膜などに約700種類を超える細菌が生息しています。そのすべての菌が悪さをするわけではありませんが、腸内細菌と同じように良い菌と悪い菌が生息しています。歯周病はお口のなかに生息する幾つかの悪玉菌がかたまり、歯垢やプラークを形成し、そこをすみかとして増殖。やがて歯茎の腫れや出血などの症状を引き起こしたり骨をも溶かしてしまう恐ろしい病気です。
お口のなかの炎症を繰り返し進行する歯周病
- 歯周病になると、歯茎に炎症が起き腫れたり出血を伴ったりします。歯周病のひとつである歯周炎は歯を支える土台となる歯槽骨が溶けて歯茎が下がり、歯を失うこともあります。
- 歯と歯茎の間にたまった汚れ(歯垢)が歯周病の原因のひとつです。歯垢の中の毒素などによって歯茎などの歯周組織が炎症を起こします。
- 炎症が進むと歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深いすき間ができてしまいます。歯周ポケットが汚れのたまり場となり炎症がより奥へと侵入し歯茎などの歯周組織が炎症を起こします。
- 歯周病菌は歯周ポケットが浅いうちは歯みがきでかき出すことができますが、歯周ポケットが深くなるほど歯ブラシが届かなくなります。
40~50代になってから症状があらわれはじめる歯周病
なぜ気づかないのでしょう
気づかない理由 その1
歯周病の名前は聞いたことがあるけど、原因や症状についてはよくわからないし、私は大丈夫くらいに考え、それほど深刻な病気ではないと思っている人は少なくありません。ところが日本人の成人の80%以上が歯周病といわれ、その多くが歯を失うことを防げずにいます。30代で78%、40代で82%、50代で87%の人が歯周病といわれ、歯を失う原因の第1位が歯周病であるにもかかわらず、多くの人は歯周病を意識していないのです。
気づかない理由 その2
私たちの体には外部から体内に侵入する細菌やウイルスに対して、それを防御する機能(免疫機能)が備わっているため細菌に感染したとしても、すぐに歯周病を発症するわけではありません。はやい人で10代で歯周病に感染していますが、10代、20代のうちは体の防衛機能(免疫力)が強いため、歯周病の発症が抑えられています。しかし40代を過ぎる頃になると、体の免疫力が低下し細菌に対する抵抗力も弱くなっていきます。
気づかない理由 その3
歯周病が成人病のひとつといわれる由縁はここにあります。乱れた食生活や喫煙などを繰り返し続けると体にとっては大きなストレスとなります。また現代はストレス社会ともいわれ、多くの人は何らかのストレスを抱えながら生活しているといわれています。こうしたストレスで私たちが本来もっている体の状態を快適で一定に保とうとする調節機能を狂わせます。そのため体の防御機能がきちんと働かなくなり、感染症である歯周病が発症し、進行していきます。
第2話 院内学習会にて
歯周病と
メタボリックシンドローム
健康の維持や疾患の予防、早期発見に役立つとして健康診断を定期的に受ける方は多いとおもいます。そこで問題とされるのが、肥満(腹部肥満)、高血糖、高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロールのうち、3つ以上がそろった状態をメトボリックシンドローム(代謝症候群)といいます。腸のまわりや腹腔内の「内臓脂肪の蓄積」による高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が重なって引き起こすいわゆるメタボです。
「内臓脂肪の蓄積」= 悪玉サイトカイン
私たちの脂肪細胞は20歳くらいまでは脂肪そのものの数が増え、20歳を過ぎると細胞の一つひとつが巨大化することで体に悪い影響を及ぼします。この巨大化した脂肪細胞から炎症を引き起こす「悪玉サイトカイン」というホルモンが生まれます。この悪玉サイトカインが歯周病の症状を強め、歯周組織を破壊していきます。
歯周病は全身の
健康・病気に影響します
歯周病は、歯垢(プラーク)に含まれている『歯周病菌』が原因で、歯肉(歯茎)が腫れたり、出血したりする「歯周組織の症状」です。歯周病菌は腫れた歯肉から簡単に血管内に侵入し全身に回ってしまいます。 歯周病菌が全身に回ると、さまざまな悪影響や疾患を悪化させる原因になります。
歯周病が全身に及ぼす影響
- 糖尿病
- 狭心症、心筋梗塞、心内膜炎
- 脳梗塞
- 誤嚥性肺炎
- 骨粗鬆症
- 菌血症、敗血症
- 不妊症・早産、低体重児出産
- リウマチ・関節炎・腎炎
糖尿病
近年、糖尿病の患者さんが歯周病を徹底的に治療することで血糖値が改善する、ということが明らかになってきています。歯周病を徹底的に治療することで歯周病菌が血管内に侵入することを防ぐことができれば、炎症物質の分泌が抑えられインスリンの働きが正常に戻ることで血糖値も改善するということです。糖尿病の患者さんは歯周病を併発している人がほとんどです。歯周病をきちんと治療することが、血糖値を改善する第1歩といっても過言ではありません。
心筋梗塞・脳梗塞
糖尿病の患者さんの場合、その二次症状として動脈硬化による「心筋梗塞」や「脳梗塞」といった、命に関わる合併症を併発することがあります。それらは糖尿病による血圧上昇が原因となっています。これら高血糖・高血圧から引き起こされる合併症には共通点があり、心筋梗塞も脳梗塞も基本的には動脈硬化(血管障害)から発病することが多いということです。実際の年齢以上に血管の劣化・老化を早めてしまう原因は、食べ過ぎや飲み過ぎ、喫煙やストレスなどの生活習慣などと密接に関係し発病・進行する糖尿病などの生活習慣病です。そして近年の研究で歯周病もまた、動脈硬化(血管障害)の危険因子である可能性が高いことが解明されつつあります。
誤嚥性肺炎
歯周病菌が体内に入り込む経路に血液のほかに気道があります。唾液中に歯周病菌が混ざり気道に流れ込むと“肺の炎症”を引き起こします。さらに、人工呼吸器をつけた患者さんの肺炎リスクは極めて高く、院内での感染症による死因のトップです。歯垢の中の悪玉細菌がチューブを介して肺に侵入して深刻な影響を及ぼしていると考えられています。気道に唾液などの異物が入ると、通常は反射的にむせたりしてそれを防ぎますが、睡眠中はそれもできず、気道に流れ込んでしまうことがあります。これを誤嚥〈ごえん〉といい、誤嚥によって起こる肺炎を「誤嚥性肺炎」と呼んでいます。誤嚥は、病気や加齢、歯の本数が少ない方が飲み込む機能や咳をする力が弱くなったり、唾液の中に多くの細菌が含まれている歯周病の患者さんは口腔内の細菌や逆流した胃液が誤って気管に入りやすくなり、その結果、誤嚥性肺炎を発症します。
骨粗鬆症
これまで骨粗鬆症と歯周病の関係は、骨粗鬆症状態にある人は普通の人に比べて歯周病が悪化しやすいと考えられていました。しかし最近では歯周病を治療すると、骨粗鬆症の状態が改善するという症例もみられるようになりました。歯の治療のために撮影されたレントゲン写真から骨粗鬆症を診断できるようにもなってきています。骨粗鬆症治療に伴う顎骨および歯周組織の変化、影響に関しての研究が進んでいます。歯科治療の段階で骨粗鬆症の兆候を発見することができる日も近いと思われます。
心臓病
歯周病と関連がある病気として「感染性心内膜炎〈かんせんせいしんないまくえん〉」があります。感染性心内膜炎とは、心臓の内壁を覆っている膜「心内膜」に細菌などが感染して炎症が起こり、心臓の働きが低下する病気です。お口の中にいる歯周病菌などの悪玉菌が、抜歯や出血を伴う歯肉治療時に血液中に入り込んで発病(菌血症)することは古くから広く知られています。
不妊症・早産 低体重児出産
歯周病は親から子どもへ感染しますが、妊婦さんが歯周病だと胎児へ悪い影響を及ぼすことが明らかになっています。日本臨床歯周病学会の報告によると、歯周病にかかっている人は普通のお産をした人に比べて7倍も早産や低体重児のリスクが高くなります。妊娠中の女性が歯周病に罹患(りかん)している場合、早期低体重児出産のリスクが7倍も高まるという報告が、1996年に米国で発表されました。妊娠や月経で分泌される女性ホルモンは、血中から歯と歯茎の境目にある溝に到達して、歯周病菌を増殖させてしまうという特徴があります。自治体が妊婦に歯科健診を勧める理由は、歯周病の有無をチェックさせるためです。これは逆にいえば、早産や低体重児出産の産科的疾患は歯周病治療によりそのリスクを大幅に軽減できるということです。
菌血症・敗血症
歯周病菌を含む口腔内細菌が血液中に侵入する現象を指します。歯周病にかかると歯肉に炎症が起こり、歯磨きなどの際に出血し、細菌などが血液中に侵入すると菌血症を引き起こします。歯原性細菌症によって細菌などが全身をまわると敗血症(はいけつしょう)の原因になります。敗血症になると重篤な全身症状を引き起こします。
リウマチ
リウマチは、免疫異常により関節に腫れや痛みがともなう炎症が起こる病気です。また関節リウマチと歯周病の原因や病態には共通する点が多くあり、関節リウマチがあると歯周病がさらに進行し、逆に歯周病があると関節リウマチに影響するといわれています。
第3話 ホームケア
楽しい雰囲気の中で
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