共同通信社  6月5日(火) 配信

 歯周病は自分の歯を失う大きな原因となるが、急速に普及するインプラント
(人工歯根)でも同じような症状になることがある。自分の歯に比べ進行が速
い半面、気付くのは遅れがち。専門医はインプラント治療前のケアと、定期的
なチェックの大切さを訴える。

 歯周病は歯と歯茎の間に繁殖する細菌への感染によって起きる。歯茎が腫れ
たり出血したりする歯肉炎から、歯を支えるあごの骨にも影響する歯周炎に進
み、放置すれば最終的には骨がとけて歯が抜けてしまう。

 チタンでできた土台を骨に埋め込み、その上に人工歯を置くのがインプラン
ト治療。土台は骨にしっかり固定されるため硬い物もかめるが、自分の歯との
違いは、歯と骨の間に歯根膜(しこんまく)と呼ばれるコラーゲン組織がインプ
ラントにはないことだ。

 「天然のバリアーとも言える歯根膜がないため、骨の側に細菌が入りやすく
なる」
と、治療に携わる東京再生医療センター(東京都千代田区)の清水智幸
(しみず・ともゆき)院長は話す。インプラントの表面には、骨と結合しやすくす
るため微細な穴が多数あり、ここに細菌が入り込むことも影響する。

 

 歯周炎に相当する「インプラント周囲炎」まで進んだ時に周囲の骨が失われ
るスピードは、自分の歯の場合の数倍から数十倍
とも言われるが、インプラン
トは骨に固定されているため、抜かざるを得ない状態になって初めて医療機関
に来る人も珍しくないという。

 歯周病治療を応用してレーザーや超音波、アミノ酸や殺菌水などを使った取り
組みを進める清水院長。「歯周病を治さないままインプラントを埋め込んだり、
その後のケアが十分でなかったりするケースが多い」と、患者の増加を懸念する。