むし歯が神経まで到達してしまった場合や、アクシデントで歯が折れて神経の中に細菌が入り込んでしまった場合など、神経に炎症が起こると激しい痛みが起こるため、神経を取る治療が必要になります。

 

神経を取った後は土台を立てて補綴物を被せて修復しますが、神経を取った歯は寿命が短くなると言われています。それはいったいなぜでしょうか。

 

神経に炎症が起こると強い痛みが起こる

 

神経に炎症が起こる大きな原因は、むし歯です。むし歯は虫歯菌が出す酸によって少しずつ歯が溶ける病気で、小さなお子さんから高齢の方まで、あらゆる年代で発症します。

 

むし歯はすぐに神経に達するわけではありません。歯の表面のエナメル質が少しずつ溶け、神経を保護している象牙質、そして神経が通っている歯髄へと進行します。痛みはエナメル質が溶けはじめたころはまだ何も感じませんが、むし歯が進行するにつれ、痛い、しみるといった症状が出始めます。むし歯は自然治癒しないため、そのまま放置しているとやがて神経まで到達します。

 

神経まで虫歯が広がると、激しい痛みが起こります。それまで何とか我慢をしてきた人もこの痛みに耐えられず、歯医者に駆け込む人は少なくありません。それほどまでに神経に到達したむし歯は、強い痛みを感じるのです。

 

この痛みは「ズキズキ」と脈を打ったような強い痛みで、痛み止めを飲んでも一時しのぎにしかなりません。また上顎の場合、頭まで痛くなることもあります。

 

一般的な治療法とは?

 

神経が入っている管を「歯髄」といい、神経の他に血管も通っており、歯に栄養分を与えています。この歯髄がむし歯になると歯髄を保存うることが難しくなり、処置が必要になります。

 

神経まで達したむし歯の一般的な治療法は、虫歯菌菌に汚染された神経の管を取り除いて内部をきれいにする「根管治療」という治療になります。

 

歯髄を取り除いた後は、虫歯菌がなくなるまで洗浄、消毒を行い、無菌状態にします。少しでも細菌が残っていると、いつまでも痛みが引かず、さらに悪化する恐れがあります。

 

またむし歯でなくても歯が折れて歯髄が露出し、そこから細菌が入り込んでしまった場合も同じような治療が行われることが多いでしょう。

 

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歯の神経を取り除いた後の懸念点

 

虫歯菌に汚染された歯髄を取り除き、値の中をきれいにした歯は、被せ物を被せて再び歯としての機能を回復させることができる状態となります。抜歯をせずに自分の歯を残せたことは、大きな意味を持つことになります。

 

しかし、神経を取り除いた歯にはいくつかの懸念点があり、それは将来的に歯を失うかもしれないということに繋がります。

 

まずいちばんの懸念点は、歯に栄養を送る歯髄を取り除くことで、歯が脆くなることです。よく例えられるのが枯れ木で、栄養素が送り届けられなくなった歯は枯れ木と同じです。水や養分をたっぷりと吸収する木はとても元気で葉っぱも青々としていますが、水や栄養分を絶たれた木や葉っぱがどのような状態なのか、想像してみて下さい。枯れ木の状態に置かれた歯は脆くなり、歯が欠けたり割れたりする原因になります。

 

もうひとつの懸念点は、補綴物を入れるために歯をたくさん削らなければならないことです。まず根管治療で歯を削り、土台を立てて形成するためにさらに歯を削ります。そうなると必然的に歯は薄くなってしまいます。

 

被せ物を被せた歯は噛む機能を回復することができますが、毎日たべものを噛んでいると薄くなった歯は被せ物があるとはいえ、ダメージに耐えられなくなり、歯が割れてしまうリスクが高まります。

 

歯が根っこから割れてしまうと、まず保存不可となり、抜歯となるでしょう。こういったことからわかるように、神経を取った歯は神経がある歯に比べて寿命が短いと言われるのです。

 

 

歯の神経を取らずに済む方法はないの?

それではむし歯などで歯髄に炎症が起きた歯は必ず神経を取らなけばならないのでしょうか。

 

保険診療では歯を削って神経を取って詰める、被せる。この治療法がスタンダートです。しかし自費治療では、歯を極力削らず、神経も取り除かない治療を行うことが可能なケースもあります。歯髄を残すことができれば、結果的に歯の寿命を伸ばすことができること、噛んだ時への体の健康へ良い影響があるなど、歯の神経を保存することで多くのメリットが生まれます。

 

ただし全てのケースで神経を保存することができるわけではありませんので、色々な選択肢を考えながら、最善の治療法は何かを見つけることが大切です。

 

 

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コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。
その後、平成18年に「千里中央 にしお歯科(大阪府豊中市)」を開院。