お口の中のトラブルの中でも、年齢を問わず最も多く起こるのは、むし歯です。むし歯は痛みやしみる症状が出るため気付きやすいですが、「そのうち治るだろう」と放置していませんか?むし歯は自然治癒するものではなく、そのままにしておくと様々なリスクを抱えてしまいます。

ではむし歯を放置しておくと、いったいどのようなリスクが起きるのでしょうか。

自然治癒することがないむし歯

風邪をひいたときや、転んですりむいてケガをしてしまった場合、なにもせずに様子を見て過ごす方もいると思います。人間には自然治癒力と言うものが備わっており、自分で治す作用により症状が緩和されることがしばしばあります。

ところがむし歯に関しては、残念ながら自然に治るということはありません。むし歯は虫歯菌によって歯が少しずつ溶けていきますが、治療をせずそのまま放置すると、どんどん症状が悪化していきます。

むし歯の一歩手前である状態を「脱灰」と言いますが、歯の表面がほんの少し溶けて白く濁っているものの、まだ歯を削らずに済むためフッ素塗布やレーザー治療で治癒できる可能性もあります。しかしいちどエナメル質に穴が開いてしまうと、治療をしなければ痛みが強くなり、歯の神経を取ったり抜歯になってしまう可能性があります。

このように、むし歯になると自然治癒は望めず、痛みが増してしまいます。

 

むし歯治療にも!レーザー治療についてはこちら

むし歯を放置するとどんなリスクを抱える?

むし歯かな?と思ったらすぐに歯医者へ行ってむし歯治療を受けることで、大切な歯の機能を残すことができます。しかし「まだそんなに痛くないから」「時間がないから」「そのうち治るだろう」と放置していると、あとで大変な目に逢ってしまいます。ではむし歯をそのまま放置しておくと、どのようなリスクが起こるのでしょうか。

①痛みが増して食事が辛くなるリスク

初期のむし歯なら冷たいものや甘い物が少ししみる程度で、食事にもそれほど差し障りがないかもしれません。しかしむし歯が進行すると、熱いものでも痛みを感じるようになり、食事が苦痛になってしまいます。その結果、消化不良を起こしたり体力が低下するなど、体の健康へのリスクが出てしまいます。

②痛みが断続的に来るようになるリスク

むし歯が神経まで達すると、常に強い痛みに襲われます。ズキズキと強い痛みが断続的に襲ってくるため痛み止めが手放せなくなってしまいます。また夜中に強い痛みを感じることが多く、睡眠を妨げられることも出てくると集中力を欠いて、勉強や仕事に差し障りが出てしまいます。

③口臭が強くなるリスク

口臭の原因には色々ありますが、むし歯もそのひとつです。生理的な口臭とは違い、むし歯による口臭は内部の組織が虫歯菌によって溶けて発酵し、腐ったような臭いを放ちます。口臭が気になるものの原因がむし歯とは思わず、口臭対策スプレーや飴などで対処していると、かえってお口の中の環境が悪くなり、むし歯の進行にも影響してしまいます。むし歯が原因の口臭は、むし歯を治さないと改善しません。

④歯が溶けて差し歯ができなくなるリスク

神経まで到達したむし歯でもきちんと治療をすれば、自分の歯を残して差し歯を被せることができます。しかしむし歯を放置すると歯が全部溶けて根っこだけになってしまいます。根っこだけになると土台を立てることができず、差し歯にすることができません。根っこだけになった歯は残念ながら抜歯になります。(レーザー処置で歯質を強化することで抜歯を回避できることがあります)

⑤顎や頬が大きく腫れてしまうリスク

むし歯が悪化すると顎や頬が大きく腫れる「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」という症状を引きおこすことがあります。虫歯菌による感染が顎や頬まで広がり、炎症を引き起こして大きく腫れてしまいます。この状態になると大きな病院で点滴や抗生剤の投与が必要になるケースが多くなります。ここまで感染が広がると、通院や治療に時間と費用を費やすだけでなく、ご自身の顔を見るのもイヤになり、ネガティブな気分になります。

⑥体中に虫歯菌が回り合併症を引き起こすリスク

虫歯菌が血管内部に入り込み、血流に乗って虫歯菌が全身に回ってしまうことがあります。脳や心臓に虫歯菌が達すると、命に係わる合併症を引き起こす可能性があります。

 

できるだけ歯を削らない最新治療!ドックベストセメントについて詳しい内容はこちら

 

たかがむし歯、と放置するのは危険です

むし歯を放置することで起こるリスクについてお話いたしました。

むし歯なんて子どもがなるもの、これくらいの痛みなら余裕で耐えられる、面倒・・・などと、むし歯になっているにもかかわらず、そのまま放置すると後から大変な目に逢ってしまいます。「あのときもっと早く受診すればよかった」と後悔しても後の祭り、ということも珍しくありません。

歯に痛みがある、しみるといった症状があることは、歯にトラブルが起きているサインです。そのサインを見落とさず、必ず早めに受診するようにしましょう。

 

コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。
その後、平成18年に「千里中央 にしお歯科(大阪府豊中市)」を開院。