歯ぐきから膿が出ると、とてもイヤな臭いを放ち、周りの人に不快感を与えてしまいます。健康な歯や歯ぐきからは膿が出ることはありません。膿が出てくるということは、何かトラブルが起きているというサインです。では歯ぐきから膿が出る原因にはどういったことが考えられるのでしょうか。
最大の原因は歯周病
歯ぐきから膿が出る場合、考えられる最も大きな原因は歯周病です。歯周病は、歯周病菌によって歯ぐきや歯を支える歯槽骨などに炎症が起きる病気で、そのままにしておくと歯が抜けてしまいます。また体の健康にも関連していると言われており、歯周病はお口の中だけではとどまらない怖い病気であると言えます。
歯周病はある日突然発症するものではありません。少しずつ症状が悪化し、気が付けば歯がグラグラになって進行を止められなくなってしまった、という事例がとてもたくさんあります。
また歯周病のやっかいなところは、むし歯と異なり痛みをあまり感じないまま症状が進んでしまうことです。歯ぐきの腫れと出血が主な原因ですが、初期の段階では歯ぐきの炎症が起きてもあまり痛みは感じません。「歯磨きのときに血が出るな」というだけであり、痛みがないためそのまま放置してしまうことで、悪化を招いてしまうのです。
歯周病が悪化すると歯を支える組織に影響が出てしまいます。また初期の段階では見られなかったある症状が起こります。それが「膿が溜まること」です。膿が溜まるこの症状は、別名「歯槽膿漏」です。現在は歯周病という言葉で言われますが、かつては歯槽膿漏と呼ばれ、文字通り膿が溜まって漏れて出てしまうのです。
初期の段階で適切な治療を受けておくと、歯周病の悪化を防ぐことは可能です。しかし膿が溜まって漏れてしまうところまで進行すると、歯を残すことは難しくなります。
また膿が漏れると非常に強い悪臭を放ちます。この口臭は表現し難いものであり、重度歯周病特有の臭さがあります。よく言われるのが「ドブの腐った臭い」という何ともイヤな表現ですが、それほどの悪臭を放つということになります。
歯周病以外で考えられる原因とは？
歯ぐきから膿が出る一番多く原因は歯周病ですが、それ以外にもいくつか原因が考えられます。
１．根尖病巣
根尖病巣（こんせんびょうそう）とは、むし歯によって根の先に膿が溜まる病気です。歯ぐきが白くぷくっと腫れてる、そこから膿が出るという症状が見られます。むし歯による膿もかなりイヤな臭いを放ちます。根尖病巣は神経を取った歯の根の先端に起こります。神経を取った歯に起こるトラブルの一種と言えます。
２．歯の根が割れている
歯の根っこがむし歯などで割れてしまうことを「歯根破折」と言い、歯根破折が起こることで膿が溜まることがあります。歯の根っこが割れてしまうと被せ物を被せても歯が動き、いずれは被せ物が外れてしまうことがほとんどです。また被せ物が動くからと受診した際に、歯の根っこが割れていることが判明することがあります。
気を付けたいのは、やはり歯周病
根尖病巣や歯根破折は、早い段階で気が付くことでまだご自身の歯を残すことが可能です。しかし同じ膿が出る病気でも、歯周病は早期に歯周病治療を行わないと、症状が悪化してしまいます。また歯周病はいちどに数本失ってしまう可能性が高い病気でもあります。重度歯周病によって保存できない歯は残念ながら抜歯となり、入れ歯などの治療を行って機能を回復させるしかありません。
膿が出るほど進行させないためには、普段から歯ぐきの状態をよくチェックしておくことが大切です。歯ぐきの腫れや出血は若い年齢でも起こりますが、歯周病に発展しやすいのは30代以降です。それまでは歯肉炎でおさまっていたものが、年齢を重ねるにつれだんだんと歯周病へと進行していきます。
毎日の丁寧な歯磨きに加え、歯周病になっていないかどうかなどをチェックするための定期検診が欠かせません。歯周病にならないよう、また悪化させないよう、常に気を付けておきましょう。
症状に応じた治療を行うことが大切
歯ぐきから膿が出ることは、何かトラブルが起きている大きなサインです。その主な原因は歯周病ですが、必ずしも歯周病だけが原因ではありません。まずは早期に歯科医院を受診し、何が原因で膿が出ているのかを突き止める必要があります。そして症状に合った適切な治療を受けることで、歯の寿命を延ばすことが可能となります。
歯ぐきから膿が出てきた、口臭が強くなった気がするなどは分かりやすいサインです。このサインを見逃さないよう、気になる症状が起きた場合は早期に受診するようにして下さい。
コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、 大阪府の歯科医院にて5年間勤務。 その後、平成18年に「千里中央 にしお歯科(大阪府豊中市)」を開院。