オーラルフレイルという言葉を聞いたことがありますか?オーラルとは口腔のことを言い、歯磨き剤などの名称の一部にも使われているので分かる方も多いと思いますが、オーラルフレイルという意味そのものをご存じの方は少ないのではないでしょうか。オーラルフレイルとはどういう意味なのか、どういったことを表すのかなど今回はオーラルフレイルについて詳しくお話をしたいと思います。

オーラルフレイルとはどういう意味?

私たちが普段何気なく行っている「食べる」「飲み込む」「話す」などといった機能が不自由なく行えるのは、お口の機能がきちんと働いているからです。

ところが、加齢により少しずつ噛む、飲み込む、滑舌が悪くなるなど口腔機能が低下していきます。この口腔機能の低下を「オーラルフレイル」と呼んでいます。フレイルとは日本老年医学会が2014年医提唱した概念で、身体的機能や認知機能が低下した状態を表す言葉です。すなわちオーラルフレイルとはオーラル(口腔)+フレイル(機能の低下)を合わせた言葉なのです。

オーラルフレイルは病気というわけではありません。しかし口腔機能が衰えることで食べることに様々な悪影響が及ぼされ、体の健康や脳の認知機能の低下を引き起こすなど体の健康にとって深刻な状況を引き起こしてしまいます。

またオーラルフレイルは精神面にも影響が出てしまいます。口腔機能が低下すると食べる楽しみが減少して低栄養に陥ってしまいます。そして周りの人達との交流が円滑に行えなくなり、精神面でもダメージを受けてしまいます。その結果食べる楽しみがなくなり、他社とのコミュニケーションも取りづらくなって活力の低下を招いてしまいます。

 

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オーラルフレイルの原因とは

口腔機能が低下するオーラルフレイルの最大の原因は、加齢です。年齢を重ねるごとに様々な体の機能が衰えていくことは仕方がないことです。体の筋力が落ちてきた、物忘れが出てきたといった老化現象はよく聞きますが、お口の機能においても少しずつ機能が低下し始めます。

ではどうして加齢が最大の原因になるのかというと、それは歯周病などの口腔内疾患により残存歯が少なくなり、噛む機能などが衰えてくるためです。歯周病は30代以降から少しずつ進行し、適切なケアがされていない状態でつい日が経つと、徐々に歯を支える歯槽骨が吸収され、歯がグラグラになってきます。さらに歯周病が進行すると歯が抜け落ち、残存歯も歯周病の影響を受けて維持することが困難になり、1本、また1本と歯を失っていくことになります。

歯が抜けて本数が少なくなると、当然噛むことが困難になってしまいます。

さらに加齢が進むと、食事中にむせ込んだり、固いものが噛めなくなってくるなど噛む機能にも影響が出てきてしまいます。歯周病になっている方は誤嚥性肺炎の恐れもあり、最悪の場合命にかかわってしまうこともあります。

オーラルフレイルの症状とは?

では加齢により口腔機能の低下がみられるオーラルフレイルは、どのような症状が起きるのでしょうか。次のような症状があると、オーラルフレイルの始まりかもしれません。

1.食べこぼしや食事中のむせ返りが増える

オーラルフレイルは食べ物を噛む、飲み込むといった機能が衰えてくるため、食事中にうまく噛めずに食べこぼしが起きる、また食事中にむせて咳き込むといった症状が見られます。

2.滑舌が悪くなる

舌の動きの機能が低下し、滑舌が悪くなってしゃべり辛くなるのもオーラルフレイルのひとつの特徴です。また虫歯や歯周病によって歯を失い、義歯になった場合も滑舌が悪くなりますが、これもオーラルフレイルの特徴です。

 

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オーラルフレイルは防ぐことができます

加齢とともに体やお口の健康にも様々な変化が起きてきます。年齢を重ねることによるこういった変化は避けて通ることはできませんが、予防をすることは可能です。ではオーラルフレイルはどのようにして防ぐことができるのでしょうか。

口腔機能低下を招くオーラルフレイルは、虫歯や歯周病の予防を行い、残存歯を少しでも多く残すことが大きなポイントです。そのためには、定期検診をきちんと受け、虫歯や歯周病の早期発見、早期治療を行うことが重要です。

また唾液分泌の低下も高齢者によく見られる症状です。唾液の分泌が少なくなるとお口の中の細菌が爆発的に増え、一気に歯周病が進行してしまいます。唾液を分泌させるマッサージを行うなど、常にお口の中が唾液で潤っているようにしましょう。

そして舌やお口周りの筋肉を鍛えることも、オーラルフレイルの予防の一環です。お口や舌の体操というものがありますので、こういったものを取り入れることはとても有効です。口腔内を清潔に保つことはご自身の毎日のセルフケアや歯科医院での定期検診などで維持、改善することは可能ですが、最近では自治体も積極的にオーラルフレイルについての取り組みを行っているところも多いので、積極的に参加されると良いでしょう。

厚生労働省と日本歯科医師会が定めた8020運動の啓発も、オーラルフレイルを防ぐためです。80歳で20本の歯を残すことができることが理想であり、いつまでもご自身の歯で美味しい食事を楽しむことが、健康の秘訣です。オーラルフレイルかな?と思われる症状が見られたら、できるだけ早めに歯科医院を受診し、口腔内の機能を低下させないよう心がけましょう。