みなさんは、朝の歯磨きはどのタイミングで行っていますか?多くの方が、朝食後に歯磨きを行われるのではないかと思います。もちろん、食後の歯磨きはとても大切ですが、朝起きたときの歯磨きのタイミングは、実は起きてすぐ行うことの推奨されています。これはなぜでしょうか。

寝起きの口腔内は最も不潔な状態

歯やお口の中の健康を維持するうえで歯磨きは欠かせません。お口の中にはとても多くの細菌が棲みついており、むし歯や歯周病のリスクを常に持ち合わせています。この細菌を少しでも減らすためには毎日の歯磨きと、たくさんの唾液の分泌が不可欠です。

唾液は起きているときはたくさん分泌され、自浄作用が働きますが、就寝中は分泌量が減少し、細菌の数が起きている時と比べておよそ30倍くらいに増えてしまいます。そのため、寝起きの口腔内は最も不潔な状態になるのです。このような状態で食事をすると、爆発的に増えた細菌をそのまま体内に取り込んでしまうことになり、腸内環境の乱れなどを引き起こすことがあると言われています。また免疫力が下がっている方や高齢の方は、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが高まってしまいます。

寝起きはすぐに歯磨きをし、どうしても無理な場合はせめてうがいだけでも済ませてから食事をするようにしましょう。

 

就寝中に口内細菌がより増えやすい人とは?

寝ている間は唾液がほとんど分泌されないため、どうしても細菌が増えてしまいますが、その中でも特に細菌が爆発的に増えやすい方がおられます。では就寝中に細菌が特に増えやすい方には、どのようなことが原因として考えられるのでしょうか。

・口呼吸の方

日中に無意識に口が開いて口呼吸になっている方は、就寝中も必ずといっていいほど、口を開けて寝てしまいます。口呼吸になると、お口の中が乾いてしまってせっかくの唾液の自浄効果が薄れてしまいます。唾液が少なくなると細菌の働きでプラークが作られ、虫歯菌や歯周病菌などの細菌が活動しやすい環境となってしまいます。日中の口呼吸でこの状態になると、就寝中に口を開けて寝ることによってよりお口の中が乾いてしまい、鼻呼吸をしている方や就寝中に口を閉じて寝る方と比べ、より口内細菌が増えやすくなってしまいます。

・出っ歯や歯並びが悪い方

出っ歯や歯並びが悪い方も、就寝中に口内細菌が増えやすい傾向にあります。特に出っ歯の場合、歯が前へ出ているため口が閉じにくく、つい無意識で口呼吸になってしまいます。また歯並びがデコボコな方も、歯磨きがし辛く汚れや食べかすが残りがちになり、口内環境が保ちにくくなります。

・副作用等で唾液分泌が少ない方

薬の副作用などで日中の唾液分泌が少ない方も、どうしても就寝時のお口の渇きは避けられません。口を閉じて寝ていても、もともとの唾液分泌量が少ないと口内細菌がどうしても多くなってしまいます。それに加え、就寝中の唾液分泌量が少なくなるのでさらに口腔内の細菌がとても多くなってしまいます。

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細菌が増えることに伴うリスクとは?

お口の中には無数の細菌が棲みついており、その多くは日和見菌と考えられています。口腔内を清潔な状態に維持できると、むし歯や歯周病にもなりにくいですが、口腔内の管理がおろそかになると、細菌の活動が活発化し、むし歯などトラブルの引き金となってしまいます。

特に就寝中は唾液の分泌が少なくなり、細菌が急増します。そして増えた細菌は活発に活動しますのでむし歯リスクが高まってしまうのです。

細菌をできるだけ増やさないようにするには?

残念なことに、お口の中の細菌をゼロにすることは不可能です。無菌状態はおなかの中の赤ちゃんだけで、離乳食を始めるとともに少しずつお口の中の細菌は増えていき、大人になると非常に多くの細菌が棲みついており、むし歯や歯周病といったトラブルを引き起こしやすくなります。

細菌をできるだけ増やさず、お口の健康を守るためにはお口の中を清潔に保つことが第一です。寝起きの歯磨きは、そのスタートラインとも言えるでしょう。

まずは朝起きてすぐに歯磨きをすることで、就寝中に爆発的に増えた細菌を洗い流すことができます。うがいをするだけでもずいぶん違います。寝起きの不潔な口腔内のまま飲食を行わないよう、気を付けましょう。

それ以外にも口呼吸を改善する、定期的に歯科医院へ通い、クリーニングを受けるといったことが対策として挙げられます。日常の歯磨きにおいては、デンタルフロスや歯間ブラシといった補助道具を使うことで食べかすを取り除き、細菌の活動の場をなくすことも大切です。

食後の歯磨きはもちろん、寝起きの歯磨きやうがいを習慣づけ、清潔で健康な口腔内を維持するよう心がけましょう。

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コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。
その後、平成18年に「千里中央 にしお歯科(大阪府豊中市)」を開院。