毎日を健康に過ごすためには、まず食事を摂ることが基本です。その食事は美味しく召し上がれていますか?美味しく食事をするためには、「しっかりと噛める歯や歯ぐき」であることが前提であり、お口の管理が欠かせません。噛めないお口の中では美味しく食事ができないばかりか、体の健康へ影響が出てしまいます。では「噛めないお口」にならないためには、どのようなことに気を付けなければいけないのでしょうか。

しっかり噛めなくなるとどうなるの?

しっかり噛めるということは、健康な歯や歯ぐきがあってこそできることです。しっかり噛むことは心身の健康を維持するために欠かすことができません。年齢を重ねてくると「年だから噛めなくなってきた」と思われるかもしれませんが、健康な歯と歯ぐきがあれば、何歳になっても美味しく食事をすることができます。しっかり噛めなくなるのは年齢のせいだけではなりません。若い方でもお口の状況が悪い方は少なくなく、年齢は関係ありません。ではしっかりと噛めなくなったらどうなるのでしょうか。

・消化吸収が悪くなる

・健康維持や体力の低下に繋がる

・柔らかいもの、噛まなくてよいものばかり口にするようになる

・食べこぼしや滑舌が悪くなる

・心身の健康が低下する

・社会的コミュニケーションが疎遠になる

・認知症になるリスクが高まる

このように、噛めないことによって体の健康だけでなく、心の健康維持にも悪影響が出てきてしまいます。

しっかり噛めない・・・考えられる原因とは?

よく噛んで食事をすることは、消化吸収を助け、脳の活性化にもつながります。健康な毎日を送るために欠かせない毎日の食事は、よく噛める歯があるかこそできることなのです。しかしよく噛めない歯や歯ぐきは、消化吸収が悪くなる、柔らかいものしか噛めない、柔らかいものでも噛むことができないなど、食事面や健康面において悪影響を及ぼしてしまいます。ではしっかり噛めないお口の中とは、何が原因なのでしょうか。

1.歯周病

歯周病は、歯周病菌によって歯を支える歯ぐきや歯槽骨に炎症が起きる病気です。若い頃は歯ぐきが腫れる程度の歯肉炎で治まっていたのが、年齢を重ねるにつれ歯周病へと進行し、成人のほとんどの方は歯周病に罹患していると言われています。歯周病はむし歯のように痛みをあまり感じることのないまま症状が進むため、自覚症状を感じるころにはかなり症状が悪化していることがほとんどです。その自覚症状とは、歯ぐきの腫れや出血だけでなく、歯が揺れ動いて噛むと痛い、といった症状です。最悪の場合、歯を支える歯槽骨が減って歯が抜け落ちてしまいます。

歯周病は一本の歯だけで起きるのではなく、お口全体に症状が出ることが多いため、一気にたくさんの歯を抜かなければいけなくなることも少なくありません。その結果噛むことができなくなってしまいます。

2.むし歯の悪化

むし歯は痛みがある、歯が欠けるといった分かりやすい症状が出るため早めに治療にかかることで歯を残すことができます。しかしむし歯があるのに放置していると、歯が溶けて根っこだけになってしまいます。根っこだけになった歯は差し歯などができません。このように、むし歯が悪化して根っこだけになったままの歯は噛み辛くなってしまいます。

3.失った部分の欠損補綴ができていない

歯周病やむし歯で歯を失ってしまった場合、早急に噛む機能を回復させる治療が必要です。一般的には入れ歯、ブリッジ、自費ではインプラントが欠損補綴治療になり、いずれかの治療を受けて噛める機能を回復させる必要があります。しかしその治療を行わず、抜けたままにしておくと噛むことができません。また同じ側でばかり噛んでいるとお口周りの筋肉のバランスが悪くなってしまいます。

4.受け口や開咬などの不正咬合

受け口や開咬など、骨格が原因で起きる不正咬合は正しい咀嚼ができません。正しい咀嚼ができないため顎関節に負担がかかり、顎の骨が痛くなるといった症状が起きやすくなります。また開咬は前歯で噛めないだけでなく、奥歯に過度な負担がかかるため歯にダメージを受けやすく、歯が割れるなど将来的に歯を失ってしまう可能性があります。

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「噛めないお口」にならないようにするためには?

お話したように、噛めないお口の状況が続くことで体の健康や心の健康に大きな影響を受けてしまいます。「体の健康はお口から」というように、まずはしっかりと噛める口腔内へ改善し、それを維持する必要があります。

まず心がけたいのは、定期的な検診を受けることです。病院や会社での健康診断と同じように、歯科医院での定期検診はお口の中が健康かどうか、歯周病やむし歯はないか、入れ歯を使っておられる方は入れ歯がきちんと機能しているかどうかなどをチェックします。もし異常があれば速やかに治療を受けることで悪化を防ぐことが可能です。歯周病やむし歯で失った部分をそのままにしている方は、入れ歯やブリッジなどで噛む機能を回復させましょう。

また受け口などの不正咬合の方は、歯列矯正を考えてみられることもひとつの方法です。歯列矯正は若い方だけのものではありません。口腔機能に大きな影響を与えるような歯並びや不正咬合の方は、専門家に相談してみると良いでしょう。

美味しく食事をいただき、健やかな日々を送るためには「よく噛めるお口」がとても大きな意味を持ちます。「噛めないお口」をそのまま放置することは絶対に避けましょう。

コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。