健康の第一歩は「食べること」です。食べることは、人間の健康維持にとって不可欠であり、毎日の生活を送るうえで食事はとても重要です。そして「食べること」というのは、しっかりと噛めるということでもあり、歯や歯ぐきといったお口の機能がきちんと果たせていることになります。健康な日々を送るために欠かせないお口の機能ですが、「噛めないお口」にならないためにはどうすればよいのでしょうか。

噛めないお口になってしまうかもしれない症状とは?

「よく噛んで食べましょう」と子どもの頃に言われた記憶はありませんか?よく噛むことで食べ物がすり潰され、たくさんの唾液と混ぜ合わされて消化器官に送られます。この何気ない繰り返しはが、毎日の健康維持の基礎となるのですが、よく噛めないお口では、柔らかいものしか噛めない、噛まなくでも良い栄養補助食品に頼りきりになってしまいます。これでは栄養バランスが偏り、健康にも影響が出てしまうかもしれません。

では「よく噛めないお口」になってしまう可能性があるのは、どういったトラブルが考えられるのでしょうか。

1.むし歯

むし歯は、年齢や性別を問わず、お口の中で起きるトラブルの中でも最も多いものです。ミュータンス菌などの虫歯菌が出す酸により歯が溶けていくため、早期の治療が必要になります。しかしむし歯を放置し、根っこだけになってしまった歯では噛み辛くなります。根っこだけになった歯が何本もあると、食事にも差し支えがあります。

2.歯周病

歯周病は、むし歯と並んで歯を失う原因となります。歯周病菌によって歯を支える歯ぐきや顎の骨に炎症が起こります。むし歯と異なり、痛みをあまり感じないまま症状が進んでいくため、気が付いた時には歯がグラグラし、一気に多くの歯を失ってしまう可能性が高くなります。

3.ガタガタの歯並びや噛み合わせの悪さ、不正咬合

歯並びの悪さや噛み合わせの悪さも、噛む機能に影響が出てしまいます。ガタガタの歯並びは歯磨きがし辛く、むし歯や歯周病の原因となるプラークが溜まりやすくなってしまいます。また重度の受け口や開咬といった不正咬合は、他の歯や顎の骨に負担がかかりやすいため、噛む機能にも影響を受けてしまいます。ぱっと見た感じの歯列は悪くないのに、前歯で噛めない、顎の関節が痛くなるという方は、噛めないお口になる要素となってしまいます。

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噛むためには、症状に応じた治療が必要

むし歯や歯周病で歯を失ってしまった場合、最も良くないのは「そのままにしておく」ことです。むし歯や歯周病にならないことが最善策ですが、不幸にも歯を失ってしまった場合、まずは噛む機能を取り戻す治療が必要になります。これを欠損補綴と言い、入れ歯、ブリッジ、インプラントが選択肢となります。それぞれにメリットデメリットがあり、お口の中の状況によっては選択肢が限られてしまうことがあります。

年齢やお口の中の状態に左右されない選択肢としては、入れ歯になります。年齢を重ねた方は受け入れる方が大半ですが、まだ若い年代の方で入れ歯となると、どうしても抵抗があるかもしれません。ブリッジなら見た目は悪くなく、入れ歯よりもしっかりと噛めるため、欠損補綴としての選択肢は高いでしょう。ただ、健康な歯をたくさん削らなければいけないというデメリットがあることをまず理解しておく必要があります。

インプラントは自費治療のため、費用はグンと上がります。高額な費用と治療期間が長めになることがネックですが、顎の骨の量が十分足りているなど条件が合えば、最もきれいに欠損部分を補うことができます。

歯並びの悪さや不正咬合は、歯列矯正が改善策になります。矯正治療によって噛み合わせを正しく整えることができれば、見た目はもちろん、しっかりと噛む機能を手に入れることができます。

このように、しっかりと噛めるお口にするためにはそのまま放置せず、必要な治療と補綴による改善を目指すことがとても重要なのです。

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「噛めないお口」にならないためには?

元々の歯並びの悪さや不正咬合は、遺伝や骨格が原因であることが多く、未然に防ぐことはなかなか困難です。しかし、むし歯や歯周病は予防することが可能です。むし歯や歯周病の原因は、プラークです。プラークが溜まらないよう、毎日の歯磨きをしっかりと行うこと、また食生活や日常生活の過ごし方次第でむし歯や歯周病を防ぐことは不可能ではありません。

それに加え、定期的な検診やクリーニングを受けることは、噛めないお口にならないための最大の予防です。家庭での歯磨きだけでは落としきれない汚れや、自分では取れない歯石をプロの手で落とすことで、お口の中をきれいに保ち、トラブルを早期に発見することができます。むし歯や歯周病は発見が早ければ早いほど、歯を残すことができます。ご自身の歯がたくさんあれば、しっかりと噛むことができるのです。噛めないお口になって後悔しないよう、毎日の歯磨きと定期検診を心がけてください。

よく噛んで食べることは、健康への第一歩です。よく噛めるお口を維持するためにも、ご自身の口腔内を常に意識しておく習慣を付けておきましょう。

 

コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。