健康で快活な毎日を送るのは、毎日の食事です。つまり「しっかりと噛むことができる口腔機能」であるかどうかが重要であり、健康で過ごすための口腔機能が働いているかどうかがポイントとなります。この口腔機能が衰えることを「オーラルフレイル」といい、健康や心身の低下を招きやすくなります。そして心身の低下とともに気になるのが、認知症でしょう。今回は、オーラルフレイルと認知症の関係に注目をしてみたいと思います。

オーラルフレイルになると、どうなる?

あまり聞きなれないオーラルフレイルという言葉ですが、噛む機能だけでなく、話す機能や呼吸をするなどといった、日常生活に欠かせない機能の衰え、低下を意味します。健康な方の場合、食べる、話す、呼吸するといった機能は無意識に行っていますが、もしこの機能が衰えたらどうでしょうか?「噛めない」「食事が満足にできない」「話し辛い」「呼吸し辛い」といった症状が自分の身に起きたらどのように感じるでしょうか?

まず、食べること、噛むことが辛くなると食事がし辛くなり、健康に影響が出てしまいます。嚥下機能も低下しますので、むせかえる、ボロボロこぼしてしまうといったことも起こりやすくなります。人と一緒に食事もしにくいでしょう。そうなると、人前に出るのが嫌になってしまい、社会とのつながりが疎遠になっていきます。

口腔機能の低下と社会との繋がりが希薄になるため、ますます食べる意欲や日々の楽しみがなくなり、悪循環に陥ってしまうのです。

毎日の健康は、食べること、そして人との会話など社会との繋がりも大きく関わります。オーラルフレイルになると、健康な毎日が少しずつ崩れていき、最後には健康を害するばかりでなく、社会からも取り残されてしまうことも懸念されます。

またオーラルフレイルが進むと咀嚼機能の低下や嚥下障害を招き、誤嚥性肺炎や要介護の状態になってしまう恐れがありますので、早めの対処が必要です。

オーラルフレイルは認知症になるの?

口腔機能の低下は、心身の低下も引き起こすというと、認知症の心配も起こるのではないでしょうか。噛む機能が低下する大きな原因として、歯周病が挙げられます。歯周病は、年齢とともに症状が現れやすくなり、気が付けばたくさんの歯を失ってしまうことにもなりかねません。その結果、しっかりと噛むことが難しくなってしまいます。健康な歯と歯ぐきがあれば、固いものもしっかりと噛むことができます。健康な歯がたくさんあり、よく噛むことで脳の活性化を促します。

ところが、歯周病によって多くの歯を失うと、よく噛むことができず、脳の活性化が低下し、認知症を引き起こす可能性が高まってしまいます。

したがって、オーラルフレイルが認知症を引き起こす可能性は十分に考えられると言えるでしょう。

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オーラルフレイル対策をしっかりと立てておきましょう

オーラルフレイルは、むし歯などと異なり、病気の症状が出るというわけではありません。飲食時や会話といった日常生活において、少しずつ衰えが現れてくるのが特徴です。オーラルフレイルの特徴として、以下のような症状が見られます。

・むせかえることが多くなってきた

・食べこぼしが増えてきた

・滑舌が悪くなってきた

・固いものが噛めなくなってきた

・口の中が乾燥してきた

このような症状はありませんか?「年だから・・・」「歯が少ないから」とそのままにしておくと、症状が悪化し、毎日の生活にも支障が出てきてしまいます。早めの対策で口腔機能の低下を防ぎましょう。

オーラルフレイルにならないためには、口腔内を健康に保つことが大切です。むし歯や歯周病になった場合、そのままにしておかずに早期の治療を受けることで悪化を防ぐことができます。

また定期検診を受けることも大切です。歯垢や歯石は、特に歯周病の悪化の原因となるため、定期的に除去しましょう。

入れ歯を使っておられる方は、入れ歯を清潔に保つように心がけましょう。不潔な入れ歯を使うと、口腔カンジダなどカビによる病気が起きてしまいます。入れ歯は常に清潔にし、マメに調整をしてもらうようにしてください。噛めない入れ歯のままでは、しっかり噛むことができません。入れ歯が緩くなった、噛み辛くなったと感じたら、早めに受診をして噛める状態にしてもらいましょう。

そして、口腔トレーニングも必要になってきます。普段食べること、話すことにおいて舌の機能や口周りの筋肉を意識することはほとんどないと思いますが、口腔機能が低下すると、舌の機能、口周りの筋肉、嚥下能力などが低下してしまいます。口腔トレーニングを行うことで機能を向上させることが可能です。

口腔機能を鍛える口腔トレーニングメニューは、長期的な管理、指導が必要となってきますので、かかりつけの歯科医院で相談してみて下さい。しっかり噛むことができれば、体の健康や認知症の予防にもなりますので、オーラルフレイルの予防を積極的に行い、いつまでも健康な毎日を過ごしましょう。

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コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。