健康を維持するためには、食べることが基本です。そのためには健康な歯や歯ぐきであることが欠かせません。特に年齢を重ねると、歯周病などで歯を失ってしまう傾向が強くなります。歯を失うと、噛み合わせに影響を受けてしまうので、食べることが困難になり、病気や認知症などを引き起こしやすくなると言われています。そうならないためには「口腔ケア」が重要なポイントとなってきます。では歯磨きと口腔ケアはどのような違いがあるのでしょうか。今回は、口腔ケアの重要性についてお話いたします。

健康に過ごすことは、お口から食べること

毎日何気なく食べていると、健康な歯があることをついつち見過ごしてしまうのではないでしょうか。毎日毎食当たり前のように食べることは、実はとても幸せなことなのです。

その幸せは、健康であることに深く関係します。

今、しっかりと噛めて食べれていますか?若い方は、まだまだ自分には関係ないと思うかもしれません。しかし、何十年か先になったとき、変わらずしっかりと噛める歯や歯ぐきが維持できているでしょうか?若い方は、ご自身の何十年か先のことと考えていただければと思います。

歯を失う原因は、むし歯と歯周病であることは既にご存じでしょう。年齢を重ねるにつれ、歯周病は進行しやすくなるため、歯周病による歯の損失が大半を占めるようになってきます。

歯周病はむし歯と異なり、一本の歯だけでは済まなくなってしまいます。歯を支える歯槽骨全体が歯周病菌によって吸収されてしまうため、グラグラして噛めなくなる、抜けてしまう、最悪の場合、一気にたくさんの歯を失ってしまう恐れがあります。噛めなくなる歯ではしっかり噛むことが困難になるため、当然食事にも影響してしまいます。

その結果、体の健康にも影響を受けてしまうのです。健康で過ごすことは幸せなことであり、すなわちお口の中の状態が健康であることが大前提なのです。

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口腔ケアってなに?歯磨きだけではいけないの?

むし歯や歯周病からお口の健康を守るのは、毎日の歯磨きであることは誰もが知るところです。そこでキーワードとなるのが「口腔ケア」です。

口腔ケアとは、お口の中を清潔に保つケアのことを言います。口腔ケアを行うことで、歯そのものや歯を支える歯周組織、舌などを清潔な状態に保つことを目的としています。つまり、口腔ケアを行ってお口の中を清潔にすることは、健康な日常生活に欠かせないのです。歯磨きももちろん、口腔ケアの一環です。

この歯磨きに加え、口腔機能の低下の予防を行うのが、口腔ケアです。

日本口腔ケア学会の定義では『口腔の疾病予防、健康維持、増進、リハビリテーションによりQOLの上昇を目指す』とされています。

では口腔ケアとはどういう内容のことを言うのでしょうか。

基本は、毎日の歯磨きです。歯ブラシやデンタルフロス、歯間ブラシなどを使い、食後や就寝前のお口の中をきれいにすることです。歯科医院での定期的なクリーニングを受けていらっしゃる方も増えています。

口腔ケアとは、ただ単にお口の中の清掃ではなく、食事をする、話をする、呼吸をするなど、日常生活において当たり前に行っている機能を維持するための、幅広いトータルケアのことを言います。

年齢を重ねてくると、口腔機能は少しずつ低下していきます。また病気などで寝たきりになると、お口の中の手入れが思うようにできなくなることもあります。お口の中のケアがきちんとできない状態が続くと、当然口腔内の状態が悪くなってしまいます。

加えて年齢ととともに現れてくるのが、唾液分泌低下によるお口の中の乾燥、義歯の汚れ、むせやすい、飲み込みにくい嚥下障害などです。お口の中には多くの細菌が棲みついていますが、歯周病菌などは特に増殖しやすくなり、歯が抜けてしまうだけでなく、体の健康をも脅かす存在となります。

口腔ケアは、こういった状態を未然に防ぐこと、状態を悪化させないことを目的としています。

お口の健康は全身の健康と繋がりがあることは、メディアなどを通じてたくさん報告されています。歯磨きはもちろんですが、それ以外の口腔ケアグッズなどを使い、常にお口の状態を清潔に、良好に保つことを意識しておく必要があるのです。

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歯周病は、認知症や全身疾患と深く関わっている

口腔ケアを行ううえで効果が期待できるのが、歯周病の予防や進行を抑えることです。歯周病は、ただ単に歯がなくなるだけでなく、認知症や全身疾患と深く関係していると言われています。

特に飲み込む機能が落ちている場合、誤って食べ物が器官に入ってしまうことがあります。歯周病になっていると、誤嚥の際に歯周病菌が肺に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうことがあります。

また歯周病は糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞、心内膜炎などにも関わっていると言われているため、口腔ケアを行い、歯周病を進行させないようにすることはとても重要です。

口腔ケアは、口腔機能の低下の抑制および、機能の向上を目的として効果が期待されています。

「まだ自分には関係ない」「歯磨きさえきちんとしていれば大丈夫」と思うかもしれません。しかし、今の時点で口腔ケアの重要性を知っておくことは、これから先の健康維持にとって意味のあることだと思います。

お口の中を常に清潔に保つことは、食事が楽しめること、そしてそれはとても幸せなことです。ご自身でのセルフケアに加え、歯科医院でのクリーニングを是非受けるようにしましょう。また介護や介助をしている方で、口腔ケアのやり方が分からない方は、かかりつけの歯科医院に相談してみて下さい。

 

コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務