歯を失う大きな原因である歯周病は、「お年寄りがなるもの」と思っていませんか?かつて歯槽膿漏と言われていた歯周病は、確かに高齢者の方に起こりやすいイメージがあるかもしれません。しかし、若い年齢層であっても、歯周病になる可能性は非常に高いため、若い自分は歯周病なんて無縁、と思い込んでいませんか?歯周病は幅広い年代に起こります。今回は、歯周病と年齢に注目してお話をいたします。

どうして歯周病になるの?歯槽膿漏とは違うの?

歯周病は、むし歯と並んで歯を失う大きな原因となる細菌によるトラブルです。むし歯も歯周病も細菌が原因であり、むし歯は歯そのものを溶かす虫歯菌、歯周病は歯を支える歯槽骨や歯ぐきに炎症を起こす歯周病菌によって引き起こされます。

歯周病の原因は「プラーク」です。プラークは歯垢とも言われる細菌の塊です。白っぽくネバネバとした柔らかなプラークは、主に歯と歯ぐきの境目に付着しています。このプラークから毒素が出され、歯ぐきや歯槽骨といった、歯を支える組織に炎症を引き起こします。歯を支えている歯槽骨にまで炎症が起こると、徐々に歯槽骨が吸収されて歯を支えることができなくなり、やがてグラグラになってきます。また歯周病が進行すると膿を持つようになり、炎症が広がってしまいます。

この状態をかつては「歯槽膿漏」と呼んでいました。つまり歯周病と歯槽膿漏は同じです。ただ今の時代は歯槽膿漏という言葉よりも歯周病と言われることが多くなっています。高齢者の方は歯周病よりも歯槽膿漏と聞くほうが分かりやすいかもしれません。

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若くても歯周病になるの?

では若くても歯周病になるのでしょうか。前述したように、歯周病は決して高齢者だけに起こる病気ではありません。プラークが付着している状態を放置していると、若い年代でも歯周病になってしまう可能性は十分あります。

歯周病は、歯肉炎と歯周炎というものに分けられます。歯肉炎と歯周炎を大きくまとめたのが、歯周病です。どちらもプラークが原因で起こりますが、同じ歯周病でも、歯肉炎と歯周炎はどのような違いがあるのでしょうか。

歯肉炎

歯肉炎とは、プラークが原因で起こる歯肉の炎症です。歯ぐきがブヨブヨと腫れて赤くなり、歯磨きのときに出血を伴うことがあります。歯肉炎は炎症が歯ぐきだけに起きており、歯周病の進行具合の目安となる歯周ポケット数値も正常であり、歯槽骨に炎症が起きていない状態を言います。

歯肉炎は、低年齢でも起こります。5歳~20代といった低年齢で起こりやすく、特に思春期の時期はホルモンバランスの影響もあり、歯肉炎が起きやすい状態となります。

歯周炎

歯周炎は、炎症が歯肉だけでなく歯槽骨にまで広がった状態を言います。歯周ポケット数値も歯肉炎より高くなり、歯槽骨が少しずつ吸収されていきます。悪化すると歯が動くようになり、膿も溜まってくるため特有の悪臭が起こります。この口臭も歯周病の特徴のひとつです。歯周炎が悪化するにつれ、歯ぐきが下がる、歯槽骨の吸収が進み、歯が揺れ始めるといった症状が見られます。

年齢を重ねると、歯周炎になるリスクは高くなり、高齢になるとほとんどの方が歯周病になっています。ただ高齢で歯周病になっていても、歯をたくさん失ってしまっている方もいれば、多くの歯が残っている方もいます。

歯肉炎も歯周炎もむし歯と違い、歯が溶けることはないため見た目ではほとんど分かりません。歯肉炎や歯周炎の症状として現れるのが「歯ぐきの炎症」です。低年齢のお子さんにも歯ぐきの炎症は起こるため、若くても歯周病の予備軍であることは常に頭の中に入れておいた方が良いでしょう。現在では、20代であっても2~3割の割合で歯周病に感染しており、高齢者になると5~6割に増えると言われています。年齢にかかわらず歯ぐきの腫れがみられたら、歯肉炎や歯周炎を疑ってみて下さい。

歯周病は早期発見と定期検診が大切!

歯周病はある日突然起こるわけではありません。歯ぐきの腫れや炎症といった症状がみられた段階で、歯肉炎になっていると思われます。歯肉炎が悪化すると歯周炎となり、やがて歯を支える組織まで悪くなってしまいます。

歯周病で歯を失わないためには、歯周病の早期発見と定期的なクリーニングが最も効果的です。歯肉炎の段階で正しいブラッシングやケアを行うことで、歯周炎への進行はある程度防ぐことが可能です。

また歯ぐきの腫れや出血は最も分かりやすいサインです。ですが、自己診断ではなく、歯科医院で受診することが大切です。自分では自覚がなくても、歯周ポケット数値が深い、プラークや歯石が付いているのが気付かず、歯科医院で初めて指摘されたなど、歯科医院でしか分からないことがあります。

特にタバコを吸っている方はニコチンの影響により、自覚症状が現れにくい傾向があるため、歯周病の発見が遅れてしまうことがあります。また歯並びが悪く、歯と歯が重なっている部分は歯磨きがしにくいため、歯周病のリスクが高まります。

歯周病の予防には、毎日の丁寧なブラッシングに加え、歯科医院での定期検診が欠かせません。定期検診では歯石除去やクリーニング、噛み合わせの調整、必要に応じたレントゲン撮影などお口の中の健康に問題がないかどうかをチェックします。たとえプラークや歯石が付いていても、プロの技術でしっかりと取り除いてもらうことで、お口の中を清潔な状態に取り戻すことができます。

毎日の丁寧なブラッシングと定期検診で歯周病から大切な歯を守りましょう。

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コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、
大阪府の歯科医院にて5年間勤務。