最近、メディアでもよく取り上げられるようになってきた「オーラルフレイル」という言葉。オーラルフレイルとは、口腔機能の低下の総称であり、加齢とともにみられる現象です。カタカナで表記されると難しく感じるかもしれないオーラルフレイルですが、いったいどのような機能低下の状態を言うのでしょうか。
オーラルフレイルとは?
先日も、テレビの情報番組で紹介されていた「オーラルフレイル」。高齢の方は、カタカナや英語の言い方が分かり辛いことも多く、オーラルフレイルという言葉を見て聞いても「?」「そんな難しい言い方分からない」「日本語でどういう意味?」など疑問ばかりが浮かぶことと思います。オーラルフレイルとは「口腔機能の低下、衰え」のことを言います。
口腔機能の低下や衰えといっても、そもそも口腔機能がどういったものなのか、根本的に理解ができるでしょうか?お口のトラブルというと、まず最初に浮かぶのが「むし歯」ではないかと思います。続いて「歯周病」。歯周病は、わりと最近の言い方であり、高齢者にとっては「歯槽膿漏」というほうが分かりやすいかもしれません。
オーラルフレイルは、むし歯や歯周病そのものを言うのではなく、「お口の機能」が低下することです。ではお口の機能とは、どういった機能のことを言うのでしょうか。
・噛む、飲み込む
・会話をする
・表情をつくる
とても簡潔に表すと、上記のようになります。
まず、「噛む」「飲み込む」ことは、お口の中で最も重要な機能です。ひとことで食事をするといっても、噛む、飲み込むといった機能が正常に働かなければ食事をとるのが難しくなります。特に飲み込む力が衰えてくると、食事自体が満足に行えなくなり、体力の低下に繋がります。
次に「会話をする」ですが、食事同様普段何気なく行っている会話も、お口の機能がとても大きく関係します。会話には「舌の動き」が関わりますが、口腔機能が低下すると舌の機能も衰えます。その結果滑舌が悪くなり、話し辛くなってしまうことがあります。
そして口腔機能は、表情づくりにも関係します。よく食べ、よく話すことは、生き生きとした表情づくりにも繋がります。お口周りの筋肉や舌の動きが活発な人は口腔機能にも大きな問題がなく、表情も豊かです。
ところが口腔機能が低下するとお口周りの筋肉や舌の動きも悪くなり、表情にも影響が出てしまいます。無表情、ぼーっとした表情などは、口腔機能低下が関わっていると考えられるのです。話すことが億劫になる、無表情になると、人との関わり、つまり社会的な繋がりから孤立してしまう恐れがあります。
このように、口腔機能は毎日元気に生活をするうえで欠かせない機能です。この機能が衰えることが「オーラルフレイル」であり、日々の生活の低下および社会的な繋がりを隔てる招く原因となってしまうのです。
オーラルフレイルを引き起こす原因とは?
オーラルフレイル自体は、病名が付くような病気ではなく、加齢に伴う生理現象の一つと言われています。つまりオーラルフレイルのいちばんの原因は「加齢」です。
年齢を重ねるにつれ、若い頃と比べると色々な面で衰えを感じるでしょう。オーラルフレイルもその一環で、口腔機能自体も、若い頃と比べるとどうしても低下してしまうのは否めません。これは「8020運動」にも関係があります。8020運動は、80歳になっても自分の歯を20本残すことを目標とするものですが、多くの高齢者は何本か歯を失い、総入れ歯で生活をしている方も少なくはありません。つまり歯を失うことが、オーラルフレイルに繋がると言えるのです。
その原因が、むし歯および歯周病です。特に歯周病は自覚症状をあまり感じないまま症状が進行してしまうため、一気に多くの歯を失う可能性もあります。しっかりとした噛める歯が少ないと、食事に差し障りが出てしまうでしょう。そこへ加齢が加わることで、オーラルフレイルの症状が現れてしまうのです。
オーラルフレイルの症状とは?
ではオーラルフレイルはどういった症状なのでしょうか。
・食べこぼし
・噛めないものが増えてくる
・嚥下中にむせる
・滑舌が悪くなる
年齢を重ねるにつれ、上記のような症状が出始めるとオーラルフレイルが疑われます。このような症状はある日突然出るのではなく、徐々にみられるため「最近食事中によくむせるようになってきた」「昔は固いものでも食べられたのに、ここ数年から固いものが噛み辛くなってきた」など、「気が付けば」という感じが多いかもしれません。オーラルフレイル自体は病気ではないので、気づかずに加齢としての症状が出てきた、と言えるでしょう。
歯周病予防はオーラルケアから。当院のオーラルケア用品についてはこちら
オーラルフレイルを進行させないことはできる?
口腔機能が低下することで、食べることや話すことなどに影響が出るオーラルフレイルですが、そのままにしておくと症状が進行してしまい、最悪な場合、食事ができなくなるということも考えられます。食事が出来なくなると体力も低下し、食べる楽しみや会話もし辛くなってしまいます。
こういったことを防止するためには、オーラルフレイルの進行をできるだけ食い止めることが重要になります。まずは口腔ケアをきちんと行い、歯周病を予防することが第一です。むし歯も気になりますが、年齢を重ねるにつれ歯周病リスクが高まるため、歯周病の治療や予防を第一に考えましょう。一本でも歯を多く残すことが、オーラルフレイル予防に繋がります。
また舌のトレーニングや咀嚼、嚥下に必要な筋肉の運動も不可欠です。歯科医院でこういった指導を受けることができるので、口腔機能低下を防ぐためにも是非相談してみて下さい。