
歯がグラグラになるお口のトラブルといえば、歯周病です。歯周病が悪化すると歯がグラグラすることを知っている方は多いでしょう。しかしそれ以外にも、歯がグラグラになることがあります。それは「咬合性外傷」というトラブルで、放置すると噛む機能に悪影響を与えてしまいます。では歯がグラグラになる「咬合性外傷」とは、いったいどのような病気なのでしょうか。
歯がグラグラする!その主な原因とは?
歯は組織の関係上、多少なりとも動く仕組みになっております。しかし食事のたびごとに歯が動いたりグラグラすると、「歯が抜けるのではないか?」と不安に感じることと思います。ではどうして歯がグラグラになってしまうのでしょうか。
1.歯周病によって歯を支える歯槽骨が吸収されている
歯がグラグラする原因の最多は、歯周病です。歯周病菌によって歯を支える組織に炎症が起こり、歯を支える歯槽骨が吸収されると歯を支えられなくなり、歯がグラグラしてしまいます。
2.噛み合わせの悪さ
噛み合わせが悪いことで歯がダメージを受け、歯がグラグラになってしまうことがあります。これが咬合性外傷と呼ばれるものです。後に詳しく説明いたします。
3.歯の根っこが割れている
何らかの原因で歯の根っこが割れてしまうと、歯が動いてしまいます。この症状を「歯根破折」といい、歯周病やむし歯に次いで、歯を失う原因でもあります。事故などで歯をぶつけて割れてしまうこともあれば、治療をした歯が弱って割れてしまうこともあります。今ではあまり見られませんが、以前は歯の神経を取った歯に金属の土台(メタルコア)を入れることで歯に負荷がかかり、歯そのものが割れてしまったり、歯根破折を招くこともあります。
この他にも、歯が揺れ動く、グラグラになる原因もありますが、主な原因は上記の3つと考えてよいでしょう。
咬合性外傷ってどんな病気?
上記で歯がグラグラになる原因を挙げましたが、2つめの咬合性外傷とはいったいどんな病気なのか、ご存じない方がほとんどではないでしょうか。ここで、咬合性外傷に付いて詳しくお話をいたします。
咬合性外傷とは、歯や歯を支える組織が過剰な力によってダメージを受けてしまうことを言います。その多くは、噛み合わせの悪さや特定の歯に過度な力がかかることで引き起こされると考えられています。つまり、歯を支える歯周組織が過度の咬合により、歯周組織が大きな負担を抱えてしまうのです。咬合性外傷の程度によっては、お口の機能に深刻な影響を与えかねません。咬合性外傷を引き起こす要因として以下の事が考えられます。
・噛み合わせが悪い
咬合性外傷を引き起こす大きな原因として、噛み合わせの悪さが挙げられます。歯並びや噛み合わせが悪いと、特定の歯に負担がかかりやすくなってしまうためです。
・食いしばり、歯ぎしり
食いしばりや歯ぎしりは無意識に行っているとはいえ、歯に多大な負担をかけてしまう悪癖のひとつです。歯ぎしりや食いしばりは顎が痛くなったり歯のすり減りを引き起こしやすいですが、それ以外にも歯や歯周組織に過度な負担をかけてしまうため、咬合性外傷を発症しやすくなります。
・合わない詰め物や被せ物
高さが合っていない詰め物や被せ物といった補綴物は、噛む力が均等に分散されにくくなってしまいます。その結果、特定の歯に負担がかかりやすくなってしまいます。
咬合性外傷を放置するとどうなる?
咬合性外傷をそのまま放置すると、お口の中に様々なトラブルを引き起こしてしまいます。特に歯を支える歯周組織が影響を受けてしまいます。歯を支えるのは歯根膜や歯槽骨ですが、こういった歯周組織がダメージを受けると、歯が揺れ動くようになり、最悪の場合、歯が抜けてしまうこともあります。
その他にも顎関節症や歯のすり減りなど、日常生活を送るうえで苦痛を感じるような症状を引き起こす可能性が高くなります。
咬合性外傷、どのような治療をするの?
歯にダメージを与えたり、最悪の場合歯を失ってしまう可能性のある咬合性外傷は、どのような治療を行うのでしょうか。
・噛み合わせ治療
噛み合わせが原因の場合、噛み合わせの調整を行います。高さや補綴物の形状を調整することで噛む力を均等に分散させることで、症状が軽減することがあります。噛み合わせの調整は、比較的初期段階で行う治療法と言えます。
・歯ぎしり用マウスピースの装着
歯ぎしりや食いしばり対策として、歯ぎしり用のマウスピースを装着する方法が挙げられます。主に寝るときに装着し、歯と歯の接触を避けることで歯や歯周組織にかかる負荷を軽減します。
・補綴治療
歯がない部分や合っていない被せ物が原因の場合、補綴物を新たに装着して噛み合わせのバランスを整え、歯にかかる力のバランスを均一化します。
・矯正治療
歯並びや噛み合わせの悪さが原因の咬合性外傷の治療法として、矯正治療が有効です。矯正治療は正しいかみ合わせを目的とした治療のため、咬合力を整えることができます。
このように、咬合性外傷の原因によって治療法は様々です。まずは咬合性外傷の原因を突き止め、原因に応じた治療法で症状の改善と歯の健康維持を目指しましょう。
コラム監修者 にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、 大阪府の歯科医院にて5年間勤務。